「世界のレスラー:プロレス専門ブログ」。「謎の日本人ヒール」だった東郷。日本風の演出&ベタな反則。レスリング技を使う器用さも。バーン・ガニア戦を紹介。
①グレート東郷(1911年10月11日~1973年12月17日)
謎のレスラー、東郷。関連書籍の発行により様々なことが明らかに。本名「ジョージ・カズオ・オカムラ」、日本名「岡村 一夫(おかむら かずお)」。オレゴン州フッドリバー出身の日系アメリカ人。両親については諸説あり、日本人または中国人、朝鮮人の血を引いているという話。「貧しい移民の子」だったため、格闘技を選択。22歳でレスラーに。太平洋戦争の影響がまだ大きかった戦後はアメリカ人の「反日感情」を上手く利用。日露戦争時の大日本帝国海軍の東郷平八郎にちなんで「グレート・トーゴー(Great Togo)」のリングネームを使用し、反則技、日本風の演出、レスリング技を取り入れた変幻自在な戦いぶりで注目を集める。
②「グレート東郷 vs. バーン・ガニア」
(1952年5月16日)
(内容)ガニアはアマチュアレスリングから1949年にプロ入りした正統派。フットボール選手としてNFLでプレーしていたこともあったが、チームオーナーから「フットボールかプロレスか」の選択を迫られ、プロレスを選んだ。プロレスの方が給料が良かったのが理由だったとか(今なら逆だろう)。NWA世界ジュニアヘビー級王座を獲得するなどの活躍。東郷との試合の時点ではまだ若手で、髪の毛がある。アメリカでの一戦。額に絆創膏を貼っている東郷。和服を着た日本人らしきセコンドと何やら儀式。塩をまくパフォーマンス。ガニアはリングシューズを履いているが、東郷は裸足。試合開始。ガニアの握手に応じず、東郷は笑顔でおじぎ。そして四股を踏む。当時はまだプロレスは真剣なもの。両者、バックや腕を取り合うレスリング。ガニアが胸板にハンマーパンチ、ヘッドロック、スクールボーイ、ドロップキック連発、タックル連発。東郷はロープブレイク時に攻撃する反則、わざとらしくおじぎしてチョップを食らうパフォーマンス、パンチ、フロントネックロック、「かんべんしてくれ」といった小狡い動き(後にリック・フレアーが得意とした演出)。スリーパーホールドを決めた東郷。ガニアと共に後方に倒れた際に肩がマットについて、カウント3。どうやら「三本勝負」のようで、取り敢えずガニアが一本先取。二本目。東郷がベアハッグ。ガニアが切り返してベアハッグ。このとき東郷の絆創膏が剥がれて、ちょっとした流血。ガニアの腕を固める東郷。「グリグリ」っといった感じのヘッドロック。ガニアはアームホイップ、ドロップキックを決めるが、スリーパーホールドでギブ。三本目。ガニアが気合いの入った猛攻。パンチの嵐、ニードロップ連発。場外に落とされ、カウント(どうやらこの時代は「場外乱闘」は無かったようだ)。リングに戻り、タックル、アームホイップ。そしてスリーパーホールドで一気に勝利。負けて悔しい東郷は食い下がるが、パンチされてしまった。なかなか面白かった試合。ガニアには勢いがあった。東郷はおそらくこの試合のようなパターンでドルを稼ぎまくったのだろう。この戦いぶりは後にアメリカのマットに上がった日本人および日系人レスラーの手本となり、前述したようにフレアーのようなアメリカ選手もこういったパターンを受け継いだというのは面白い話。その後のガニア。ルー・テーズと並ぶトップ選手となったが、NWAと衝突。1960年、ミネソタ州ミネアポリスを本拠地とするAWA(アメリカン・レスリング・アソシエーション)を結成。アンドレ・ザ・ジャイアント、ハルク・ホーガン、ザ・ロードウォリアーズ、マサ斎藤らが出場するなど大いに栄えたが、WWFのショースタイル・プロレスが人気化し、古いタイプのレスリングを見せるAWAは落ち目に。1991年、活動停止。1993年、ガニアは自己破産してしまった。
③その後
1959年9月、日本プロレスに初参戦の東郷。以後、レスラーとして活躍する一方、ブッカーとしても手腕。フレッド・ブラッシー、ザ・デストロイヤー、グレート・アントニオといった大物を日本に招聘。しかし「力道山の死」で急展開。ブッキング料を巡って日本プロレスからブッカーを解任される。その後は国際プロレスに接近。日本プロレスから大木金太郎を引き抜こうとしてユセフ・トルコと松岡巌鉄から暴行されたのは有名な話。さらにまたしてもブッキング料を巡るトラブルから国際プロレスとも決別。どうやら東郷のアメリカ流のビジネス感覚が日本とは合わなかったようで、日本ではあまり活躍できず。1973年12月17日、胃癌によりロサンゼルスで死去(62歳没)。東郷のイメージは日本ではあまりよくないが、「金銭にシビアではあったが、それに見合う仕事はしていた」という評価もある。「物事をハッキリさせるアメリカ流」が「何かと曖昧にしたがる日本流」に合わなかったというのが真相のようだ。
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